【ミリオン】紗代子の欲しかったもの
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24:伊丹 [sage]
2020/02/08(土) 20:34:12.71 ID:2EYiqEug0




……でも、先にこの均衡を破ったのは彼の方。
目を合わせていた彼の顔が、私へ、一気に近づいてくる。




え、コレってーーーー




私はとっさに目をつむる。
こうすることが、ルールだって何かに書いてあったから。





けど、



予想に反して、耳に吹きかけられるかすかな吐息。

囁くような声で、彼が短く話す。





「紗代子、降りるぞ」








電車を降りた私は、外の寒さと電車の発進するけたたましい音に、急に現実に引き戻される。


駅から劇場までの短い道のりは、ずっと彼の後ろをよちよちついて歩いた。
少し不思議そうな顔で何度か私を振り返る彼に、私は顔を逸らすしかできなかった。



だって今日は、とてもじゃないけど彼の顔、まともに見ることなんてできそうになかったから…!






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