12:伊丹 [sage]
2020/02/08(土) 20:10:37.08 ID:2EYiqEug0
「ほら、こういうとき、アイドルの誰かが言ってたかな?
『次はトップを目指しましょうね!』
ってな!」
そうイタズラにはにかんで見せる、彼。
誰だろう…と一瞬考えたけど、そんな言葉を使う人は、劇場にそんなにはいない。
知らず、強ばっていた顔から力が抜けて、口元が緩む。
彼は私のそんな顔を見て、うん。と力強く頷く。
横目で信号を確認して、私の頭から手を離しハンドルを握る。
あ、と名残惜しさを感じて、
さっきまで私に触れていた左手を見つめる。
ハンドルを握り、小刻みに動く左手。
その手首には、彼の愛用の腕時計が巻かれている。
たぶん今日の朝も、いつもの調子で時間を合わせたんだろうな、とぼんやり考える。
街灯の光を受けて腕時計のケースが鈍く光るのを、私はしばらく眺め続けた。
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