九頭竜八一「何がわかった?」夜叉神天衣「竜王になるための条件よ」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/02/05(水) 01:01:50.14 ID:30BMMpCHO
「ねえ、先生」
「ん? どうした、天衣」
「あなたに聞きたいことがあるの」
「なんだよ、改まって」

パチパチと将棋の駒が盤上でステップを踏む。
九頭竜八一は弟子に将棋の稽古をつけていた。
棋士である八一には現在、2人の弟子がいる。
何故か、2人とも小学生のかわいい女の子だ。
そのせいでロリコンの汚名が匿名掲示板界隈で轟いているが、いまはひとまず気にしない。

珍しく師匠を頼ってきた夜叉神天衣の聞きたいこととやらに、八一は静かに耳を傾けた。

「あなたの前任者のことを教えて」
「前任者?」
「あなたが倒した、前の竜王のことよ」

九頭竜八一は竜王である。
竜王と言っても竜の姿に変身したりはしない。
将棋のタイトルのひとつ、竜王戦で優勝した者に与えられる称号であり、身分の話だ。
日本広しと言えども『竜王』なる称号を持ち、その身分が公的に用いられているのは棋界しかなく、その世界において八一は王様と言えた。

とはいえ、王様が世襲制だったの今は昔。
江戸時代の終わりに実力制へと変わった。
当時は十段戦と呼ばれ勝者は十段を名乗った。

本来棋士の段位は九段までしか存在せず、いかに栄誉を称えるとは言え十段を名乗るのは盤上真理の探究者として不遜であるとのことで竜王と名を改められた経緯があるのだが、八一としては心底良かったと思っている。

なにせ八一の名前の後に十段の称号がつくと、8110段という途方もない段位になってしまうので、不遜どころの騒ぎではなくなるからだ。

などという笑い話は置いておいて、閑話休題。

話を元に戻すと竜王である八一には当然ながら前任者が存在していて、要するにその『前の竜王』を倒してその称号を手に入れたわけだ。

天衣はその前任者について、聞きたいらしい。


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