白雪千夜「私の魔法使い」
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2: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 19:24:57.61 ID:ldlfMP+C0

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   たまに見る夢は、炎が荒れ狂う夢だった。

   たいせつなものが、燃えていく夢。
   私の全てを焦がして、焼き尽くす。
   だから、私はなにも求めない。いつか燃えてしまうなら。

「――悪い夢は、覚めなきゃな」

 優しい声でそう告げられると、辺り一面を真っ白な世界が覆いつくした。

 これは夢なのだろうか。私が見る夢にそんな光景は出てこないはずだ。

 凍らせていた心を溶かす魔法の炎をくれた人は、悪い夢は覚めなきゃと言った。

 あの炎が荒れ狂う夢は私だけのものであり、私だけを苦しめるものならば。

 この白い世界がもたらす先には、どんな夢が待っているというのだろう。

   でも、形のないものなら
   もし、ずっとこの胸に灯る炎なら……。

「――――」

 声が出ない。出そうとした自分の声が聞こえてこない。

 それでも私は叫んでいた。この胸に灯ったあたたかな炎までも、どうか白く塗り潰されないように。



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