速水奏「人形の夢」
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49: ◆ty.IaxZULXr/[saga]
2020/01/24(金) 21:51:14.81 ID:W4W9+UtG0
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旧校舎・地下2階・倉庫

『キヨラさん』は柳清良の幽霊じゃない。どういうわけか人形が物の怪になって、人形は『キヨラさん』を作り出した。『キヨラさん』の話はいつもワンパターンなのは、作り物だから。その割には独立して動いているのは、別の力を得ているから。生徒達の信仰じみた思いで作り物から『キヨラさん』という存在になった。

作り物じゃない『キヨラさん』に人形は焦がれた。でも、生徒の思いを受けた『キヨラさん』は柳清良がするような行動を取る。彼女は人形の前には現れず、私を人形から遠ざける。

そんな話をしたわ。話をした自分が言うのもなんだけれど、頭のネジが外れたような話ね。そんな話を人形に向かってしている、奇妙奇天烈摩訶不思議。こんなもので、人形へのサービスは十分でしょう。

「西園寺さん、聞いていいかしら」

「違いますわ」

「かな子は、どこにいるのかしら?」

「そんなの信じませんわ」

「もう一度聞くわ。かな子、どこにいるのかしら」

「体育館の更衣室ですわ。迎えに行ってくださいな」

「ありがとう、西園寺さん」

「そんなこと、ありませんわ。きっと、あの人は必ず」

「もういいかしら」そろそろ飽きてきたわ。お年寄りだものね、簡単に意見を変えたりしない頑固モノ。人形は形が変わらないモノ。

「柳清良の思いは同じよ。彼女は人間として生きていた頃にアナタを愛したわ。アナタは生きている人間に人形として愛されるべきよ。それが受け入れられないのなら」イスから立ち上がる。人形を見下ろして、私は覚悟を決めたわ。

だけれど。

「いけませんわ」

西園寺さんの腕が、視界から人形を隠した。

「速水さんは、そんなことをする人ではありませんわ」

西園寺さんが私を見上げる。強く訴えかけるように、視線を逸らさない。

「ほら、わかったでしょう。それでも、人形の夢を見続けるのかしら」目線を先に逸らしたのは私だった。西園寺さんの手は力なくおろされ、目線も正面に戻った。

「さよなら。人形として会いましょう。その時は……キスをあげるわ」私は人形に背を向けて歩き出す。視線は、感じない。



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