速水奏「人形の夢」
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44: ◆ty.IaxZULXr/[saga]
2020/01/24(金) 21:45:53.85 ID:W4W9+UtG0
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旧校舎・地下2階・倉庫

並べられた物が、学校のものではないというのはわかった。捨てることはできないモノが、ここに置かれている。この場所の歴史を語る、多くの物たち。ホスピス以前は、農地だったことは、朽ちかけた農具が教えてくれたわ。あの人形もここから持ち出されたのかしらね、すりガラスのケースには何も入っていなかった。

そんな部屋を照らす暖色の蛍光灯の真下、漆塗りのイスが2つ並んでいて、あの人形と西園寺さんが座っていた。

「こんばんは。ようこそ、お待ちしておりましたわ」

「後でいいかしら。かな子を探したいの」西園寺さんが私を出迎えた。西園寺さんの隣に座っている人形は動かない。

「こちらにはおりませんわ」

「調べさせてもらうわ」西園寺さんは止めたりしなかったわ、嘘をついていないからでしょうね。そう広くない倉庫に、かな子がいないことは簡単にわかった。西園寺さんと人形の前に戻ると、私のためのイスが用意されていた。

「かな子はどこにいるのかしら」

「こちらにはおりませんわ」

「それはわかったわ。どこにいるか、聞いているの」

「ベッドのある部屋で眠っていますわ。ご安心してください」

「別に、どちらにも興味はないから。かな子がどこにいるか教えてちょうだい」

「慌てることはありませんわ、お座りになってくださいな」

「私を呼び出した、目的を果たそうとしているわけね」

「ええ」

「あなたの目的を叶えてあげる義理はないわ。答えなさい、私の質問に」

「そうなら、あなたは会えないことになりますわ。お座りになさって」

「あなたの目的は」嘘ではない。嘘ではないから、やりにくい。

「少しお話しませんか。あなたのためにも」

「私のため、ねぇ……」口から出まかせにも思えない。本当にそう思っている。問題は、どちらなのか、ね。

「はい。せっかく、会いに来てくれたのですから」

「かな子は無事なのね」

「もちろんですわ」

「信じることにするわ」用意されたイスに座る。首だけ動かした西園寺さんと目が逢う。人形の視線は私の方を向いていない。感じるのは、西園寺さんの視線だけ。西園寺さんがいつも通りの口調で話し始めたのを、聞き始める。身振り手振りが極端に少なくて、不気味に思えた。



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