44: ◆ty.IaxZULXr/[saga]
2020/01/24(金) 21:45:53.85 ID:W4W9+UtG0
35
旧校舎・地下2階・倉庫
並べられた物が、学校のものではないというのはわかった。捨てることはできないモノが、ここに置かれている。この場所の歴史を語る、多くの物たち。ホスピス以前は、農地だったことは、朽ちかけた農具が教えてくれたわ。あの人形もここから持ち出されたのかしらね、すりガラスのケースには何も入っていなかった。
そんな部屋を照らす暖色の蛍光灯の真下、漆塗りのイスが2つ並んでいて、あの人形と西園寺さんが座っていた。
「こんばんは。ようこそ、お待ちしておりましたわ」
「後でいいかしら。かな子を探したいの」西園寺さんが私を出迎えた。西園寺さんの隣に座っている人形は動かない。
「こちらにはおりませんわ」
「調べさせてもらうわ」西園寺さんは止めたりしなかったわ、嘘をついていないからでしょうね。そう広くない倉庫に、かな子がいないことは簡単にわかった。西園寺さんと人形の前に戻ると、私のためのイスが用意されていた。
「かな子はどこにいるのかしら」
「こちらにはおりませんわ」
「それはわかったわ。どこにいるか、聞いているの」
「ベッドのある部屋で眠っていますわ。ご安心してください」
「別に、どちらにも興味はないから。かな子がどこにいるか教えてちょうだい」
「慌てることはありませんわ、お座りになってくださいな」
「私を呼び出した、目的を果たそうとしているわけね」
「ええ」
「あなたの目的を叶えてあげる義理はないわ。答えなさい、私の質問に」
「そうなら、あなたは会えないことになりますわ。お座りになさって」
「あなたの目的は」嘘ではない。嘘ではないから、やりにくい。
「少しお話しませんか。あなたのためにも」
「私のため、ねぇ……」口から出まかせにも思えない。本当にそう思っている。問題は、どちらなのか、ね。
「はい。せっかく、会いに来てくれたのですから」
「かな子は無事なのね」
「もちろんですわ」
「信じることにするわ」用意されたイスに座る。首だけ動かした西園寺さんと目が逢う。人形の視線は私の方を向いていない。感じるのは、西園寺さんの視線だけ。西園寺さんがいつも通りの口調で話し始めたのを、聞き始める。身振り手振りが極端に少なくて、不気味に思えた。
55Res/100.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20