麻子「……華、さん」 華「はい?
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63:名無しNIPPER
2020/01/13(月) 00:59:19.80 ID:j/ROv3cf0

ザァァァァ……

麻子「……車に、気を付けてな」

華「もう……心配性ですね。わたくしを送るときいつもそう言ってますよ?」

麻子「……雨だったんだ」

華「え?」

麻子「小学生の時……親が交通事故で死んだ報せを聞いた日。あの日も雨だった」

華「…………」

麻子「きっと雨で視界が悪かったんだろう。私の親は一瞬でいなくなった。だから、車に気を付けて」

華「……はい。十分に気を付けて帰りますね」

パシャ…パシャ…

麻子「……」

麻子「……は、華さん」ダッ バシャッ

華「っ! ま、麻子さん? どうしたんですか、濡れてしまいますよ!」

麻子「い……」ポタ…

華「麻子さ……」



麻子「いかないで、くれ……」



――弱々しいわがままと強がりな理性がせめぎ合った証のようにキュッと私の裾をつまむ、びしょ濡れの麻子さんの表情があまりにも儚げで寂しそうで。

わたくしは気づけば土砂降りの中に借りた傘を放り出し、彼女の小さな体を強く抱きしめ、堪えきれずその薄朱色の唇に自身のそれを重ねていました。


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