2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/11(土) 21:38:36.63 ID:tYd/KiKIO
「マフラーが欲しい」
「ふむ。それは何故?」
ほらな、やっぱり佐々木はこういう奴だ。
人に悩むなと言いつつも理由を求めてくる。
だから事前に悩みに悩んでその理由を考えた。
「そっちの方が編むのが簡単だろ?」
「ほう? なかなか面白いことを言うね」
すっと目を細めて硬い声で、まるで見当違いな発言を咎めるようなことを言っているが、佐々木の口元は皮肉げに片方が持ち上がっていた。
「勘違いだったら悪かったな」
「やれやれ、キミがそこまで自意識過剰だったとは知らなかったよ。だけど自信満々にそんなことを言われてしまっては友人として恥をかかせたくないと思わずにはいられない。だから仕方ないけど、面倒な編み物に挑戦してみるよ」
自分で言って自分でくつくつ笑う、佐々木。
「お前、かわいいな」
「っ……い、今頃気づいたのかい?」
中学時代の俺はそこまで捻くれてはおらず、見たままの感想を素直に述べると、佐々木はほんの僅かに頬を紅潮させて取り繕っていた。
「佐々木、繕うのは編み物だけでいいぞ」
そう言って笑うと、佐々木は奥歯を噛みしめ。
「……キミは僕をどうしたいんだい?」
別に、今のままで充分だと、俺はそう思った。
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