芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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64: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:38:59.63 ID:hoMUvMIQo

 飽和した空の下、雨の残り香がそこら中に満ち満ちていた。

 以前、プロデューサーに教えてもらったことがある。
 この匂いには名前が与えられていて、たしか、ペトリコールといったはずだ。
 それがいったいどこの国で生まれた言葉なのかは知らないけれど、私はその名称を、実のところかなり気に入っていた。

 当のプロデューサーは、珍しいよね、と言っていた。
 ただの普通名詞に私が関心を寄せたという事実が、どうやら随分と興味深い事象だったらしい。
 言われてみればたしかに、それは当時の私自身からしてもかなり不思議なことだった。
 だけど、いまにして思えばその理由は明々白々で、きっと、結局はプロデューサーのせいということになるのだろう。
 あの人と行動を共にした二年間で、私は当然それなりの影響を受けていた。
 あんなにも私に寄り添ってくれたのは、多分、プロデューサーが初めてだったから。




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