25: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:13:52.39 ID:hoMUvMIQo
「傘は?」
事務所を出る直前、扉の前で彼はそう言った。
私はわざとらしく首を傾げてみせる。
「傘? 何に使うんすか、そんなの」
「傘の用途なんておおよそ一つしかないだろう」
彼の言葉を聞き流しながら、一時間ほど前に焼き付けたばかりの空の青さを思い起こす。
群青色のペンキで一面を塗装された天井みたいな、それでいてどこまでも突き抜けたような、そんな空。
脳裏で再現されていく情景に、馴染みの傘を一つ放り込んでみた。
だけど、それはやっぱり景色にうまく馴染めなくて、不機嫌そうな表情でぽつりと宙に浮いている。
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