23: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:12:28.26 ID:hoMUvMIQo
他愛もない会話を交わしているうちに、いつの間にか扉の列はふっと途切れ、幅の広い折り返し階段に行き当たる。
このフロアは四階で、かつ最上階でもあった。
私は特に気にしていないけれど、一方のプロデューサーさんはここを通るたびに、エレベーターがあればいいのにな、と口癖のように言う。
たしかにあれば便利だろうとは思うけれど、あってもどうせ使わないだろうなとも思う。
エレベーターでの移動は、そのための待ち時間をどうにも勿体なく感じてしまう。
少なくとも私には向いていない。
階段を二階まで下りると、三階や四階とは少し違った場所に出る。
その空間に強いて名前をつけるのなら休憩室とでもいうのだろうか、そんな風のだだっ広いスペースが二階には設けられている。
そして、ここを少し進んだ先には個室のシャワールームがあった。
プロデューサーさんとはここで一旦お別れだ。
「一〇分くらいで戻るっす」
「ああ、待ってる」
私は軽く手を振って、閑散としたラウンジの中を案内板の示すほうへと向かう。
シャワーを浴びながら、そういえば、とふと考えた。こうして私を待っている間の彼は、いったい何をしているのだろう?
大したものは何も見えない窓の外をぼうっと眺めているか、案外、設置されたテレビが映すバラエティ番組を観ているのかもしれない。
あるいは、彼は飲み物を持っていなかったから、自販機まで買いに行っていてもおかしくはない。
あとは、煙草とか。まあ、プロデューサーさんは煙草なんて吸っていなさそうだけれど。
そうやってあれやこれやと頭を悩ませた後で、結局何よりもしっくりときた想像は、休憩室にもかかわらず生真面目に手帳を捲っているスーツ姿で、もし本当にそうだったなら面白いなと小さく笑った。
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