6: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 09:03:50.44 ID:ck9R+qDf0
「今回は残念ながら……」
面接官の言葉は、非情だった。
さすがに紗代子も、その後どこをどう辿って家に帰り着いたのかを覚えてない。
気がつけば、部屋にいた。
ベッドに突っ伏し、涙を枕に吸わせていた。
紗代子「七転び八起きでもダメだったな……やっぱり私じゃあ、アイドル……なれないのかな……」
『そんなことない!』
いつもなら出てくるその言葉が、今日の紗代子には出せなかった。
ダメでも次がある! 次こそはがんばろう!!
オーディション落ちも、最初の3回まではそれでもそうやって自分を鼓舞してきた。
三度目の正直と勢い込んだ、3回オーディションに落ちてもまだ大丈夫。
それが、4回5回と重なる度、さすがに心中穏やかにならなくなった。
少しだけ弱音を吐き、溜息をつくようになる。
心の隅に押し込んできた、生来の後ろ向きでネガティヴな自分が顔をもたげてくる。
そしてとうとう今日、紗代子は決定的ともいえる落選を宣告された。
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