153: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:31:15.32 ID:ZRhpxi3E0
ディスプレイだけが明かりを放つ室内で、紗代子のプロデューサーである彼はキーボードを叩いていた。
昨日は、自分らしくもなく雑談などに興じてしまった。
最後の紗代子からの、名前が高山だから山好きの自分は選んだのか、との問いには思わず笑い転げてしまった。誰かと会話……ではないが、言葉のやり取りで笑ったのなどいつ以来だっただろう。
だがそれはともかくとして、それによって肝心な指示を出し忘れていては、野望……いや、復讐など果たせないではないか。
改めて指示をメールで送る。が、普段ならすぐにある返信が、今日に限ってはない。1時間が経過し、さすがに彼も小首を傾げる。
こんなことは初めてだった。紗代子だって年頃の女の子であり、常にスマホを携帯していないこともあるだろうが、それにしてもこれほど返信がないのは、初めての経験だけに彼も次第に不安になってくる。
P「通話を……し、してみる……か? ま、まあ、出ればそれでよし。そのまま切れば……う、うむ、いいんだから」
ブツブツ言いながら、30分ほども逡巡した末についに彼は紗代子のスマホに通話をかけた。が、彼女のスマホは電源が切られているようだった。
P「どうする……ど、どうするべきか……そ、そうだ。おと、音無さん……音無さんに……!」
震える指が痛む程の勢いで、Pはキーボードを打鍵する。
永遠かと思える時間が過ぎーー実際には10分程のことだったがーー音無小鳥との通話回線が開く。
小鳥「どうしたんですか?」
『紗代子と連絡が取れない。こんなことは初めてだ。何か知りませんか?』
小鳥「え? うーん。でも、紗代子ちゃんだって色々と私用とかあるんじゃないですか? 明日は大事な舞台ですし、友達とリフレッシュしてるとか」
『メールにこんなに長時間、返信がないなんて初めてなんです!』
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