28: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:29:56.00 ID:yU6CR/tX0
「あのね……」
最初の一言が思ったよりも弱々しくて慌てて取り繕ってしまう。これじゃ心配されちゃう、ダメダメっ。
29: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:30:57.14 ID:yU6CR/tX0
◇
30: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:31:24.19 ID:yU6CR/tX0
「柚さんが一緒に走ろうって言ってくれるなんてっ、嬉しいですっ!」
「この前は駅伝のお誘い断っちゃったし、それにちょっとねっ」
31: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:31:57.31 ID:yU6CR/tX0
ふたりの笑い声が白くゆらめく呼吸と一緒に朝焼けの空に響く。ゆっくりと走り出せば、悠貴チャンはペースを合わせてくれる。部活のときはもっとだらっとみんなで走ってるなーなんて反省すれば、なんだか今の自分が熱血漫画の主人公になったような気分になる。いやいやいや、それはアタシのキャラじゃないっ。
「センターのこと、受けられたんですねっ」
32: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:32:24.55 ID:yU6CR/tX0
「んー」
悠貴チャンのどうなんだろうという小さな呟きは足音にかき消されてしまいそうだった。だからアタシは答えるのをやめてしまう。アタシのイメージするセンターと、悠貴チャンのイメージするセンターは少し違うのかもしれない。これはアタシが無事にセンターを務められたら聞いてみようと思う。
33: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:33:03.90 ID:yU6CR/tX0
◇
34: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:33:32.32 ID:yU6CR/tX0
「どうかなっ?」
「はいっ、うんと、柚ちゃんはソロが多くなるのでもうちょっと声がでるといいですね」
35: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:34:06.06 ID:yU6CR/tX0
「でも柚ちゃんには柚ちゃんの歌い方ってあると思います」
「えーっ、そうかなぁ」
36: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:34:32.81 ID:yU6CR/tX0
◇
37: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:35:00.18 ID:yU6CR/tX0
センターって指揮者みたいだって感じた。
アタシを中心にして、周りに悠貴チャン、肇チャン、美世サンがいる配置。アタシのことが見えていても、いなくても、振りで、声で、アタシは全体の流れを作らなくちゃいけない。アタシが基準なんだってことになかなか慣れない。いつもなら気にしないことばかり気にしてしまって、振りも歌もワンテンポ遅れがちになってしまう。そうするとみんなにも影響が出て、微妙なズレがさらに大きな違和感になる。
38: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:35:26.69 ID:yU6CR/tX0
「あーっ、わかんないっ」
でも分からないものは分からない。声掛け、歌い出し、ソロ、振りの微調整、MC、普段と変わらないようで確実に増えた面倒なコトがアタシに雨あられと降り注いでくる。アイドルって本当に大変だ。誰もが憧れる場所に立つならミスなんてしてられない。
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