渋谷凛「いつもどおりの普通だって」
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9: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/12/24(火) 03:31:38.99 ID:FLJvNdsK0

「ねぇ」

「ん?」

「それ、一応、食べものなんだけど」

「これを食べるなんてとんでもない」

「……食べてもらうために作ったのに?」

「…………えー、でも」

「別に、ほら、また作ってあげるからさ。食べてよ」

苦笑まじりに私が言えば、彼は渋々それを了承して、口へと運ぶ。

「おいしい……」

椅子の背もたれに全体重を預けて、彼は蕩けたような仕草をする。

絶対にそこまでのものではないし、彼の表現が過剰なのはわかっているけれど、どうしても口角が上がってしまう私がいた。

「何笑ってんの」

「んーん? ちょっとね」

「何だそれ」

「楽しいな、って思って」

「そりゃよかった」

「でも、不思議だよね」

「?」

「こうやって一緒にご飯食べるのも、二人でばかみたいな話をするのも、今日に始まったことじゃないのに、なんか特別な感じがするなぁ、って」

「クリスマスパワーかな」

「うん。たぶんね」

「じゃあクリスマスパワーに乾杯しよう」

「いま、私の手、油でべとべとなんだけど」

「じゃあ俺だけで乾杯するよ」

「そこは拭くもの取ってくれたりしないかな、普通」

「今日は特別らしいし」

屁理屈をこねる彼を無視して、紙おしぼりを袋から出して手を拭う。

綺麗になった手でグラスを持って「はい」と彼の前へ差し出せば、彼もグラスを持つ。

グラス同士が当たって、かちんと軽快な音が響いた。



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