17: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/12/08(日) 21:15:04.31 ID:clFucneV0
はぁ。
短く息を押し出して、再び校庭を見るともなく、眺める。
どうしたものか。
ぐるぐると堂々巡りの思案を続けていると、不意に背後から声を投げかけられた。
「しーぶやさんっ、今日は?」
「わ。えっ、今日?」
「どっか体験入部とか行かないならさ、うちらこれからまた遊びに行くんだけど、凛も来ないかなぁ、って話してたとこでさ」
「あ、そうなんだ。どうしようかな」
「先週、一緒にカラオケ行ったじゃん? んで、凛めっちゃ歌上手いのやべぇってみんなに言ったら、あの子らも聞きたい! って」
「ちょっと大げさに伝え過ぎてない?」
「ないない。ちゃんと事実をそのままに、魅了されたー! っつって」
「それ、大げさって言うと思うんだけど」
「またまたご謙遜をー。んで? 来るよね?」
目をばっちり開いて爛々と輝かせている様は、まるで瞳までもが「来るよね? 来るよね?」と迫ってくるようだった。
彼女は誰にでもこんな調子で、初めて会った時から一貫して明るい。
場の空気を読めないわけではなく、敢えて読んでいないふうでもあるので、なんだかんだしたたかではあるとは思うが、悪い子ではない。
というか、普通に一緒にいて愉快な友人である、とこれまた数週間の付き合いではあるが、既に私はそう感じていた。
「んー。今日はちょっと、パス……かな。また誘ってよ」
「えー、外せない用事?」
「うん。私の家、花屋って言ったでしょ? それの手伝いでさ、今日はお店番する約束しちゃったんだよね」
「あちゃー」
嘘をついて友人のお誘いをかわすのは罪悪感を覚えたけれど、今日はどうしても気が進まなかった。
体験入部が迫っているということもそうなのであるが、何よりの理由は先週と条件が一致しすぎているということにあった。
金曜日、放課後、カラオケ。
先週の苦い経験を思い出して、なんとも言い難い気持ちになる。
今日はおとなしく真っすぐ帰って、土日でゆっくり考えをまとめよう。
そう思って、鞄を肩にかけて席を立つ。
談笑しているクラスメイト達に「次は参加させてね」と軽く詫びて、教室を出て学校を後にした。
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