渋谷凛「これは、そういう、必要な遠回り」
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14: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/12/08(日) 21:08:33.21 ID:clFucneV0

お店に入り、ハナコのリードを外してやる。

かちん、という金具の音と共にハナコは店内を真っすぐに突っ切って家の方へと消えていった。

丁度、来ていたお客さんに軽く会釈をして私もハナコに続く。

「あら。凛ちゃん」

呼び止められ、振り返る。

よく見れば、来ていたお客さんは昔から懇意にしてくれている近所の人だった。

「あ。お姉さん」
「うふふ、凛ちゃんは上手ね」
「え? いや、そんなわけじゃ……」

この女性は、私が幼稚園の頃からお店で度々買い物をしてくれていて、その頃には事実、お姉さんであった。

それから十年の時が流れお互いに年齢を重ねたからと言って、早々呼び方なんて変えられるはずもない。

だから、私としてはお姉さんはお姉さんなのであるが、どうやらこの人はそんなことが嬉しいらしい。

まぁ、それならそれでいいか。

真面目に説明をするのも何だか変な気がして「いつもありがとうございます。ゆっくり選んでいってくださいね」と当たり障りのないことを言い置いて、自宅へと戻るのだった。

玄関で靴を揃え、リードを靴棚にかけて、洗面所で手を洗う。

その全ての工程で、足元をちょろちょろとハナコが動き回るので倍近い時間がかかるのも、いつもの光景だ。



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