40: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 18:38:19.49 ID:86FQdztyO
……もう、いいか。
こんな事になるくらいなら、最初から幸せを受け入れるべきだった。
こんな結末を迎えるくらいなら、幸せの方がマシだった。
余計な事をするんじゃなかった。
考えるんじゃなかった、思い出すんじゃなかった。
泣き叫ぶ甜花を無視して、俺は部屋に戻る。
メモの内容は既に決まっていた。
机の引き出しを開けると、何故か白紙のメモが一枚入っていた。
これに書いて、終わりにしよう。
『忘れろ、捨てろ』
これで、良いんだ。
これで俺たちは、幸せになるんだ。
これで俺たちは、幸せに戻るんだ。
これで俺たちは、幸せに生き続けるんだ。
ベッドに倒れる千雪を見て、涙が溢れる。
階段の下に倒れる甘奈を思い出して、後悔が溢れる。
あぁ、本当に。
余計な事なんて、するもんじゃなかった。
最後に一つ心残りがあるとすれば、俺を信じてくれている人がまだ一人いると言う事くらいか。
でも良いんだ。
どうせ俺には何も出来ないのだから。
しない方が良い結末が迎えられるのだから。
『思い出せ、見つかるな』
そう書いた時の俺は、まだ希望があった気がする。
こう書いていると言う事は、まだ抜け出そうと努力していたと言う事で。
本当に、無駄な時間を過ごした。
とても長い、無限に続く今日のうちの、ほんの数日だった。
「……戻れるんだ、俺は」
千雪が生きてる。
甘奈も生きてる。
甜花だって辛い思いをしなくて良い。
そんな、幸せな世界に。
勢いよく、俺はメモを破り裂いた。
それだけで、俺は幸せになれるんだ。
……あぁ。
凄く、幸せだーー
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