4: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 17:25:10.10 ID:86FQdztyO
「……あれ、そう言えば……」
「お兄ちゃん……お代わり、いる……?」
「えっ? あぁいや、大丈夫だ。もうお腹いっぱいだよ」
朝から美味しすぎてつい随分と食べ過ぎてしまった。
お昼ご飯が食べられるか心配なくらいだ。
「それじゃあお兄ちゃん、甘奈達と遊ぼっ?」
そう言って、甘奈は背後から腕を回して来た。
肩に掛かる長い髪から、ふんわりと甘い香りが漂う。
耳元に掛かる息が擽ったい。
それだけで、酔ったかの様に意識が遠のきそうだった。
「そういう訳にもいかないだろう。俺はこれから……」
「……これから、どうかしたんですか? 兄さん」
「これから…………」
……これから、何だったのだろう。
何をするつもりだったのだろう。
本来だったら、何をしていただろう。
何をしようとして、俺は甘奈の誘いを断ったのだろう。
「妹の誘いを断るなんて、お兄ちゃんダメだよ〜?」
そうだ、そんな事はあってはならない。
俺が妹達の言葉に逆らってはならない。
俺は妹達を最優先に動かなければならない。
今までも、そしてこれからも……
なのに、何故俺は……
「……俺、昨日何してたっけ?」
「昨日ですか? 私達四人でショッピングに行ったじゃないですか」
「ひっどーい、忘れちゃったの? お兄ちゃん」
そうだったか?
いや、そうだ。
千雪と甘奈が言うのだから間違いない。
そうだ、俺達は四人でショッピングに行ったんだ。
「お兄ちゃん……荷物持ち、頑張ってた……」
「それで疲れちゃったから、今日は一日お家でゆっくりするって話だったでしょ?」
「…………昨日って、何曜日だっけ?」
「昨日ですか? 昨日は3月31日の日曜日でしたけど……」
日曜日か。
なら、家族サービスって事で荷物持ちなりなんなり付き合っただろう。
休日に家族で出かける、当たり前の事だ。
荷物を持つのも長い買い物に付き合うのも、男として当たり前の事だ。
「……じゃあ……今日は、月曜日だよな?」
昨日が日曜日なら、今日は月曜日の筈だ。
記憶が正しければ、今日は平日な筈だ。
4月の1日、年度明け。
甘奈と甜花が学校がお休みなのは、分かる。
「…………そうですけど……兄さん、どうかしたんですか?」
けれど。
「いや……月曜日なら、俺は仕事に……」
仕事に行かなければならない筈だ。
月曜日なのだから、平日なのだから。
なのに、俺は忘れていた。
仕事に行かなければならないと言う事も、俺がどんな仕事をしていたかと言う事も。
60Res/110.14 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20