白雪千夜「足りすぎている」
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89:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:28:05.28 ID:1/ZkFkMM0
 近く、世界的なスポーツの祭典が東京で行われるに辺り、その暑さ対策が様々に検討されていた。
 この日に舞い降りた雪も、その一環だったという。
 つまり、人工雪による冷却効果の実証実験を行う場として、346プロがその事務局側の公募に応じたのだ。

 真夏とはいえ夜間の、しかもアイドルのライブという、様相も条件も異なるものにも採用された辺り、まるで節操が無い。
 だが、346プロはこれを効果的なステージ演出として利用できると考え、実際その目論見は奏功したと言えるだろう。


 ちらちらと降る雪を、諸手を挙げて拾い上げようとしながらはしゃぐ観客達。
 ステージ上のアイドル達も、思った以上に綺麗に煌めくそれに、誰もが弾けるような笑顔を浮かべている。

 雪、か――。
 ルーマニアでは、一度お嬢様と雪合戦を――。

「white snow……」


 大歓声のステージ上で、流暢な英語が唐突に、それも――。

 とても小さな声だったのに、なぜか私の耳に強く響いた。


 案の定、というべきか、それはアーニャさんの声だとすぐに分かった。
 彼女の方に顔を向けると、しっかりと視線が合ったからだ。


「チヨの名字……ですね?」



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