白雪千夜「足りすぎている」
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82:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 23:55:48.09 ID:QXbKSZYO0
 後になって知ることだが、あの場には私の出番に期待して来たという観客も一定数いたらしい。
 元々、ステージパフォーマンスの仕事が多くなかっただけで、思い返せば、他の仕事での露出は少なくなかった。

 アイツの宣伝戦略、と認めるのは些か釈然としないが――。

 差し詰め、シンデレラプロジェクトの隠し球――アイツは、私をそう位置づけたのか。
 それで観客の期待感を煽り、今日のこの場で起爆するよう周到に仕込んでいた。

 だから、私の名前がプリントされた団扇を振る人もいた。
 なんと物好きな――。

「せぇーの、千夜ちゃあぁーーーーん!!!」


 一際大きな歓声が上がった一角に目を凝らす。
 あれは――。

「お……お嬢様っ!?」

 いや、お嬢様だけではない。
 一切伝えていなかったはずなのに、お嬢様や私が通う学校の同級生まで来ている。
 なんと、あんな品の無いペンライトを、黒埼のおじさまが振るうなんて――!

 動揺するなという方が無理な話だった。

 再び心臓の鼓動が早くなる私の手を、アーニャさんが握った。


「ダヴァーイ、チヨ♪ 一緒に、楽しみましょう♪」



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