白雪千夜「足りすぎている」
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277:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 01:32:55.75 ID:Hn+oLRjQ0
 その時、ステージの上で起きたことを、私はこの先誰にも言うことは無いだろう。
 お嬢様にも、アーニャにも、凛さんにも――ましてアイツや杏さんになんて。
 いくらあの人達でも、もし言ったら馬鹿にされるに決まってる。

 それでも、確かにあの瞬間、私の身体には翼が生えたのだ。

 背中に生えたであろうそれをこの目で見た訳ではない。
 でも、そうとしか説明がつかないほど、あの時の私の身体は不自然なまでに軽くなっていた。


 死に体だったはずの身に力が宿り、転げ落ちるのを待つだけだった上体が、極めてスマートかつダイナミックに理想の軌道を描く。
 同時に、私の足は真っ白な雪原を優しく撫でるように、ふわりとステージに降り立った。

 まるで、私の身体とステージが呼吸を交わし、お互いを受け入れたかのようだった。
 時間にしてみればコンマ数秒程度のその一瞬、あらゆるものに許しがあるような、満ち足りた感覚――。


 突如覚醒し、音と光の奔流が巻き起こる現実世界に引き戻される。
 流れる時に追いすがろうと、私はこれまでのどのレッスンよりも上手にその波に乗り、顔を上げた。



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