白雪千夜「足りすぎている」
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273:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 01:22:58.06 ID:Hn+oLRjQ0
 雪が舞い降りるようにゆっくりと、ピアノのイントロが静かに流れ出す。
 見渡す限り、誰も降り立たぬ雪原を踏みしめ、私が私の歩む道を刻みだす。


  時をわたる聖者のように
  どんな孤独に泣いていたの?


 “Dear boy”などと――いくらボーイッシュとはいえ、アーニャに当てて歌うのだと彼女が知ったら、怒るだろうか?
 でも、どうか大目に見てほしい。これは私のエゴだ。


  遥か遠い星をつなぎ
  ねぇ、思いを描くわ 空を見上げて


 アーニャは私に言った。
 自分のいる世界は、自分の足で歩きたいのだと。
 その言葉は、誰かを拠り所にして生きるほかなかった私に、どれほどの衝撃を与えたことか。

 信憑性のほどは定かではないが、かつての私がアーニャに与えた優しさが、彼女を強くした。
 それが、5年もの時を越えて、アーニャが私にそれを与え、ここまで来ることができた。

 私ももう一度、あなたのように強くなれるだろうか。
 存在理由を誰かのせいにするのではなく、自分で戦い、生きるための心を厚く豊かにできるのなら。
 他人に与えるだけの余裕を、持つことができたなら。

 たとえ私にはできなかったとしても、この時だけはそれをしなくてはならない。
 アーニャ――あなたには、お返しをさせて。



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