248:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 23:32:07.60 ID:1/ZkFkMM0
本番直前、ステージ衣装に着替えて舞台袖に立つ。
入場口が開放されて間もなく、客席は満杯になった。
屋内の会場は初めてだったが、観客達の興奮と期待が込められたざわめきが大気に霧散しないまま、余さずこちらに届いてくる。
湧いてくる緊張感は、こちらの方が上かも知れない。
だが、この胸の高鳴りは、それだけが要因ではないのは分かっている。
「千夜ちゃん」
声を掛けられた方に振り返ると、あの人が立っていた。
真紅を基調とした絢爛かつ妖艶な衣装に、絹糸のように煌めく金色の髪。
血の色を思わせる優美な瞳が、私を捉えて放さない。
「……ちとせさん」
「ふふっ、似合う?」
「はい。とても、綺麗です」
「ありがとう、千夜ちゃんも可愛くて綺麗だよ。冬の妖精さんみたい」
私の隣に歩み寄り、開演前のボンヤリと中途半端に照らされる舞台を、ちとせさんは見つめた。
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