白雪千夜「足りすぎている」
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245:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 23:20:17.51 ID:1/ZkFkMM0
「いや、杏は感想を言っただけだけど」
「それなら無償の愛……杏ちゃんのアガペーとして受け取っておくね」

 面倒くさそうに手を振った杏さんが寝返りを打つのを見届けると、ちとせさんは莉嘉さんに向き直る。

「ご、ごめんねちとせさん……」
「ううん、気にしなくていいよ。莉嘉ちゃんは何も間違ったことを言ってないもの」
「ちとせさん、玲音さんのレッスン大変だったの?」

 みりあさんの問いかけに、ちとせさんは「うーん」と少しとぼけてみせて、頷いた。

「4、5回くらい吐いたかな?」

「ひぃえぇぇっ!?」
「あと、足の指の爪が、全部潰れて真っ黒になっちゃったし、靴擦れもすごいよ、ほら見る?」
「いいぃいいですいいです!! ごめんなさい!!」

 すっかり脅かしてみせながら、彼女は楽しそうに笑った。
 まったく、相変わらず性格が悪い人だ。

 だが、それだけの努力を、誰にも愚痴や弱音を吐くこと無く、あの人はこなしてきたのだ。



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