白雪千夜「足りすぎている」
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244:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 23:18:35.68 ID:1/ZkFkMM0
「でもさー、やっぱいいなぁちとせさん」

 ふと、莉嘉さんが口を尖らせて羨ましげにちとせさんの方を向いた。
「あーんなスゴい人に、特別にレッスン見てもらえてたなんてさ」


 ――マズいな。
 このままでは、「ズルい」や「えこ贔屓だ」等、ちとせさんに要らぬヘイトが向けられてしまう。
 年長組は、何となく空気を読み、暗黙の了解でそれをタブーとしてきたが、幼い莉嘉さんは自分の感情に素直で、悪気が無いだけに気まずい。

「杏は絶対イヤだけどね」

 姉である美嘉さんがそれとなく莉嘉さんを咎めようとした矢先、部屋の隅っこから杏さんの声がした。

「え、杏ちゃん何で?」
「あんな偉い人のレッスンなんて楽なわけないでしょ。
 おまけに勝手に期待されて持ち上げられて、プレッシャーばかり押しつけられるんだよ」
「うっ……」


「フフッ♪ 杏ちゃん、ありがとう」

 部屋の中央にいたちとせさんが、彼女の方へニコリと微笑みかけた。

「今のは、私をフォローしてくれたんでしょう?」



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