2:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 20:47:04.88 ID:QXbKSZYO0
曰く、都心部へお出かけになられた際、芸能関係者を名乗る男から声をかけられたのだという。
耳障りの良い口車に気を良くして、自らの素性だけでなく、私の事まで紹介してしまうなど――。
「そのような誘い文句は、男が女性をたぶらかすための常套句です。
お嬢様の魅力は確たるものとしてございますが、故に安売りすべきものではありません」
「あ、じゃあ私の方も、言わせてもらうけどね」
ぷくっと頬を少し膨らませて、お嬢様は私に顔を近づけてきた。
「千夜ちゃんはもっと自分を知るべきだよ」
「自分を、ですか」
「そう、千夜ちゃんは自分がいかに魅力的な人なのかを知らない。
一度きりの短い人生、それはすごく悲しいことなんだよ?」
「お戯れを」
首を振り、私は壁に掛かる時計を見上げた。
「その男は、何時にこちらに来るのですか?」
「そろそろ来るんじゃないかな。あっ、話聞いてくれる気になった?」
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