1:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 20:44:38.25 ID:QXbKSZYO0
「お戯れを、お嬢様」
箒を持ち直し、階段を上がろうとする私を、お嬢様はなおも引き留める。
「お戯れてなんかないよ、本気で言ってるの」
「本気であるなら、なおさらタチが悪いです」
知らず、ため息が出る。
お嬢様の悪い癖だ。どうやらまた始まったらしい。
「私にどうしろと仰るのですか」
「だから、さっきから言っているでしょう」
ウンザリとした態度を見せてしまう私を尻目に、お嬢様は愉快そうに胸を張ってみせる。
「すごく大手の芸能事務所らしいよ?
悪いことは言わないから、話だけでも聞いてみてあげたらどう? ね?」
「お言葉ですが、お嬢様はもう少し世間をお知りになるべきかと」
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2:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 20:47:04.88 ID:QXbKSZYO0
曰く、都心部へお出かけになられた際、芸能関係者を名乗る男から声をかけられたのだという。
耳障りの良い口車に気を良くして、自らの素性だけでなく、私の事まで紹介してしまうなど――。
「そのような誘い文句は、男が女性をたぶらかすための常套句です。
お嬢様の魅力は確たるものとしてございますが、故に安売りすべきものではありません」
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