16:名無しNIPPER
2019/11/19(火) 23:31:28.81 ID:gbdzVW420
いつも通りの帰り道。
太陽が沈み始めても、ライラさんの額を滴る汗が止む気配はありません。
お天気お姉さんの言っていたとおり、夜までずっと暑いままだそうです。
そのせいなのでございましょうか
隣を歩くサラはというと、なんだかいつもより険しい顔つきに見えたのでした。
「ライラ様、本日はその……」
「いいのですよ。ちゃんと誤解も解けましたですし」
「いえ、実はそのことなのですが……」
ビルの影にさしかかる。
すれ違う自転車は遥か後ろへ遠ざかっていく。
言葉途切れて一呼吸。歩みを止めて、こちらを向く。
「ライラ様、私の出自について同僚の方々にお話したことはございますか?」
「出自……?いいえ、ないでございますよ?」
そう、メイドさんがいるということは何人かにはお話していました。
でも、サラの出自のことだなんて、ただの一度も、どなたにもお話したことはありませんでした。
それどころか、面識があるのはプロデューサー殿だけのはずなのでございます。
なるほど、きっとサラもそれが気がかりなのでしょう。
話せる言語の数なんて問題ではないのです。
なぜ“真っ先にその言語を選択した”のか。
お日様が沈む
カラスが飛び立つ
夜が、近づいている
「……とにかく、貰い物とはいえ、見知らぬ物は安易に口にしないように。いいですね?」
サラはライラさんのことをとても気にかけてくれる優しくて真面目な人なのですが
たまに今日のように恐い顔をすることがあるのでございます。
親が子を叱る時のよくある恐い顔とは違うのです。
外敵をライラさんから追い払わんとする警戒心がそうさせる冷たい目。
サラはあくまでもライラさんのためにこうしてくれていると
頭ではわかっているつもりではあるのですが、ライラさんとしては、このことはあまり素直に喜べないのでございます。
サラは笑うととってもきれいで世話焼きさんで優しくて……
だから本当はサラにはずっと笑っていてほしくって、あまり恐い顔はしてほしくないのでございますよ。
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