1: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:23:09.49 ID:6s/A4gNC0
第一章 遠い日の落書き
それは一本の電話から始まった。
いえ、また……動き出したのよ。
「関東テレビの者ですが、最上静香さんの携帯ですか?
実は半年後に特大歌謡祭ヒットパレードという番組を企画をしているのですが、
是非そこで最上さんにまたステージで現役の頃のように唄って踊って欲しいんですよ」
そんな内容だった。
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2: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:23:49.47 ID:6s/A4gNC0
少しだけ話をしたあと、私は通話を終えた携帯を見つめていた。
携帯の画面が放つブルーライトが目に刺さり、幻を私に見せる。
今でも思い出そうとすれば鮮明に蘇る記憶の数々……。
3: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:24:26.71 ID:6s/A4gNC0
今、ここにいるのは今日の夕飯の献立を考えるどこにでもいる日本の主婦。
学校から帰ってきた娘には宿題をしろと口うるさく言い聞かせ、
帰ってきた旦那には小言をついつい言ってしまう。
4: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:25:44.86 ID:6s/A4gNC0
私は14歳の頃に親との約束で夢にまで見たアイドルを期限付きで始めさせて貰った。
当時私を担当してくれたプロデューサーは頼りないこともあったけど、
それでも私を、私達のユニットをトップアイドルへと導いてくれた。
5: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:27:14.46 ID:6s/A4gNC0
それからしばらくして……私は27歳で引退した。
東京ドームを埋め尽くす超満員の私の引退兼解散ライブ。
客席のあちこちからすすり泣く声が聞こえ、
6: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:28:44.73 ID:6s/A4gNC0
――局からの電話のあとすぐに当時のプロデューサーからも電話がきた。
当時のプロデューサーからも電話がかかってきた。
内容は先に局の方からかかって来たそれと同じだった。
7: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:29:49.61 ID:6s/A4gNC0
……。
8: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:30:48.71 ID:6s/A4gNC0
クレシェンドブルーという私が愛した5人のアイドルユニット……。
9: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:32:20.44 ID:6s/A4gNC0
箱崎星梨花。
ユニット解散後、すぐに大学に入り直したというところまでは聞いているけれど、その後は不明。
星梨花の実家は何度か遊びに行ったことがあるので場所は分かっているけれど、
10: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:33:48.73 ID:6s/A4gNC0
電話越しのプロデューサーさんに聞く。
11: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:34:41.29 ID:6s/A4gNC0
ああ、それで私のところに電話がかかってきたんだ。
という納得と、私自身は結局志保のバーターでしかないということにショックだったが、すぐに諦めた。
12: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:36:08.07 ID:6s/A4gNC0
その後、志保にはLINEで嫌味を送ってやろうと会話の履歴から漁っていく。
その手の動きは軽やかだった。
正直に言うと、久々にやり取りができる口実ができて嬉しかったのだと思う。
13: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:37:09.66 ID:6s/A4gNC0
「言った」という文字だけが来ていた。
見ているとそのあとに「いやだった?」と付け加えられた。
14: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:37:46.79 ID:6s/A4gNC0
「もし、出るなら練習期間と打ち合わせがあるから」
「わかった」
15: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:38:44.85 ID:6s/A4gNC0
以前志保は娘の誕生日に5万円分の子供服を大量に送りつけてきたことがある。
しかも志保好みのやつばかり。
16: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:39:12.01 ID:6s/A4gNC0
第二章 新しい困難
17: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:40:31.53 ID:6s/A4gNC0
私は慣れていたはずのテレビ局の受付で手続きをなんとか済ませる。
こんな所まで私の知らない風に変わってしまっていたらどうしようかと
18: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:41:22.25 ID:6s/A4gNC0
会議室に既に入っていた何十人という十代か二十代の女の子たちは一瞬だけ、
部屋に入ってきた私を見るのに静まり返る。
19: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:42:47.76 ID:6s/A4gNC0
「あの、休憩されているところすみません、もしかして最上静香さんですか?」
20: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:43:56.63 ID:6s/A4gNC0
「ありがとう。ごめんなさい、お名前を聞かせていただいても良いかしら」
21: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2019/11/19(火) 20:44:40.75 ID:6s/A4gNC0
「合ってます!
この部屋は特番に出演する女性アイドルの打ち合わせ部屋なんです。
ってさっきスタッフさんたちが言ってました!」
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