795: ◆rbbm4ODkU.[saga]
2023/03/01(水) 00:23:26.38 ID:fFXJOFQl0
男「アレは、なんですか」
誰も答えられない質問だと分かっていてもそう聞かざるを得なかった。
「残念だがこれ以上の情報を開示はできない」
そう言って例のエレベーターのカードキーを取り出す。
「知りたいのならコレを受け取るしかない。勿論受け取れば引き返すことは出来ないが」
初めてだ。
人生の分岐点、と言えば例えば受験や就職なんかを思い浮かべる。
でもそれらは結果が周りに左右されるものばかりだ。
無論自分の実力も大事だが肝心な部分は結局他人に決められてしまう。
だけどこれは、目の前のこの分岐点は、自分で決めるものだ。
全ては自分の判断に委ねられている。責任も結果も、全て。
どちらに舵を切るにせよ100%自己責任だ。
男「何故自分なんですか、と問うてもいいでしょうか」
「駄目だ、と言うところだが、まぁいいか。無論理由は色々あるが、こうして私自身が鍵を差し出す理由はお前に見込みがあると思ったからだ。
お前は優秀だよ。でも何か違和感があった。だからこの話を聞いたとき、お前には他にいるべき場所があると思ったんだ」
この人はこれまで俺に良くしてくれた。恩師と言ってもいいだろう。
だからその言葉はよくよく響いた。
昔諦めた、ずっと意識しないようにしていた憧れを思い出す。
艦娘。
もし許されるのなら、俺は彼女達に触れたい。
男「わかりました」
しっかりと鍵を握りしめる。
「だと思ったよ」
始めてみる恩師のその少し嬉しそうでどこか寂し気な表情は今でも覚えている。
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