375: ◆rbbm4ODkU.[saga]
2020/08/03(月) 03:36:51.60 ID:Lcr1vf/j0
叢雲『あの暖かさを失うのが怖くなったのよ』
さっきも言っていたな。
本当に眠るのが怖い、と。
叢雲『薄らだけど覚えてる。いつかの私もきっとその温もりを抱いて海に出ていたのよ。でも今は違う。今の私達の中にあるのは全て過去だから。司令官のような、あの鼓動のような今がないの』
少し悲しげにそう言うと俺の右手をそっと掴んで自分の胸に押し当てた。
男『お、おい!?』
慎ましやかではあるがそこに確かに存在する柔らかなそれはそれでいてしっかりと弾力があり手の中にすっぽりと
叢雲『まだ響いてるでしょ?鼓動が』
男『うぇ!?お、おう。響いてる、な』
まだ?まだってなんだ?
叢雲『これは私のじゃないわ。私達のは記録を再生しているだけの乾いたものだもの。司令官のは違う。アナタもそうだけど、今を少しづつ刻んでる音だから。止まるまでは、暖かく響き続けてる』
男『…あぁ、そういえば艦娘は寝ている時心音がしないんだったな』
寝ている時は停止している時だから。機関部や動力部と同じで、停止する。
叢雲『今私の中に反響してる暖かいのは司令官のなのよ。まだ過去じゃない鼓動なの』
叢雲の胸から手を離す。心音は、聞こえなくなった。
叢雲『勿論これもずっとじゃないわ。私のよりずっと鮮明だけれど所詮は反響。段々弱くなっていくの。だから、その、定期的に司令官と、司令官を、抱かせてもらってるの…』
この抱くも文字通りの意味なんだろうな。あるいは人間には想像もつかない何かの比喩か。
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