14:名無しNIPPER[saga]
2019/10/05(土) 21:15:24.43 ID:pLwUdLuz0
ジュリア「……あたしが生まれて初めてギターに触ったのは、うちの父さんにギターショップに連れて行ってもらったときなんだ」
育「そうなんだ。ねぇ、ジュリアさんのおとうさんって、どんな人なの?」
ジュリア「よくいる九州のオッサンさ。ただ、若い頃バンドをやってたらしい。みんなでプロを目指してビッグになってやるぜ、なんて夢を語り合ったりもしたそうだ」
育「? じゃあ、どうしてプロにならなかったの?」
ジュリア「あたしも昔父さんとケンカになったときに、勢いで尋ねたことがあったんだ。そしたら、こう言われたよ――」
ジュリア「――みんな、大人になったってことに気づいちまったからだ、ってな」
育「どういうこと? おとなになるって、いけないことなの?」
ジュリア「そういう意味じゃないさ。あたしもそのときは意味がわからなかった。ただそう言った父さんの、寂しそうだけど懐かしさにしみじみしたような顔が、今でも印象に残ってる」
育「プロになる夢は叶わなかったけど、悲しいだけじゃないんだね」
ジュリア「そうなのかもしれない。夢を追ってたときの思い出までも否定されたわけじゃないからな」
ジュリア「夢に折り合いをつけなきゃいけなくなったこと、なんだかんだ自分らで折り合いをつけられちまったこと……それが青春の終わりってことなのかもな」
ジュリア「それがどういう感覚なのか、今のあたしもまだよくわからない。というより、わかっちまうときが来るのが怖い」
ジュリア「歌とギターのないあたし、アイドルじゃないあたし、劇場の仲間がいないあたし――今はどれも考えられないからな」
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