321: ◆YBa9bwlj/c[saga]
2020/02/03(月) 03:12:04.92 ID:L/MaCyf+0
女「それは、あなたが殺めた人の仇討ちでしょうか?」
ケモノ「いや、そんなことはしていない」
女「では、川を氾濫させ、家屋を荒らし人様の生活を脅かしたから?」
ケモノ「するものか。人の世に触れず生きてきたのだ」
女「ほら。あなたを忌避する必要など、ないのです」
ケモノ「…何を言っているんだ?」
女「邪気など微塵も感じませんから」フフッ
ケモノ(──……)
ケモノ「…すまない、世話になった」
ケモノ「ではな」
女「何処へ行くのです?」
ケモノ「ここではない、遠くだ」
女「そんな怪我をしているのに…それにこの時期益々寒さは厳しくなります」
女「…私の家を宿と思ってお使い下さい」
ケモノ「宿、だと…?」
女「その通りです」
ケモノ「……貴様、俺を謀(たばか)るつもりだな?」
女「疑うお気持ちは分かります。ただ、私の家はここよりすぐ近く。そして周りに他の家屋はありません。…居るのは私一人だけ」
女「それでも信じて頂けないようでしたら…この身を差し出しましょう」
ケモノ「……」
ケモノ(燃えるような紅い目…不思議だ、このような目をした人間は初めてだ)
ケモノ「……この傷が癒えるまで、頼む」
女「はい」ニコッ
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