花音「千聖ちゃんとの、ちょっとだけ長い帰り道」
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2: ◆bncJ1ovdPY[sage saga]
2019/09/21(土) 23:11:21.81 ID:Du4y4HqP0
千聖(カフェから数十分も歩いた頃、大きな木が見えてくる。私の家の近くにある公園に生えた、大きな一本の木)
千聖(すっかり紅く色付いた葉を見て、『もう秋ね』なんて感じていた時。ふと、握られた手に力が掛かるのを感じる)
千聖(何かあったのかと隣を見れば、花音が少しだけ寂しそうな表情をしていた)
3: ◆bncJ1ovdPY[sage saga]
2019/09/21(土) 23:11:49.90 ID:Du4y4HqP0
千聖「花音?」
花音「あっ、ごめんね。急に強く握ったりして……」
千聖「……何かあった?」
花音「ううん、なんでもないよ」
4: ◆bncJ1ovdPY[sage saga]
2019/09/21(土) 23:12:19.95 ID:Du4y4HqP0
花音「……」
千聖(分かりやすくしゅんとした花音の姿が視界に映る)
千聖(なんとなく隣の恋人が考えていることに察しが付いていた私は、軽く花音の腕を引っ張って公園の中に入る)
千聖(ベンチの側で足を止めて、花音をベンチに座らせた)
5: ◆bncJ1ovdPY[sage saga]
2019/09/21(土) 23:12:59.67 ID:Du4y4HqP0
千聖「花音?言ってくれなきゃ分からないわ」
千聖(ベンチに座りながら声を掛けてみるも、花音から返事はない)
千聖(その代わりに、勢い良く抱き着いてきた)
6: ◆bncJ1ovdPY[sage saga]
2019/09/21(土) 23:14:14.89 ID:Du4y4HqP0
千聖「どうしたの?」
千聖(花音が何を言いたいかは分かっているけれど。花音の口から聞きたくて、意地悪な問いを投げかける)
花音「……もっと、してほしいな……」
7: ◆bncJ1ovdPY[sage saga]
2019/09/21(土) 23:14:42.81 ID:Du4y4HqP0
千聖(潤んだ瞳でねだってくる花音に私も耐えきれなくなって、抱き締める腕を強める)
千聖(青い髪に手を添えると、表情が期待に染まる。頭を撫でてあげると、笑顔を浮かべてくれる)
花音「わ……えへへ……」
8: ◆bncJ1ovdPY[sage saga]
2019/09/21(土) 23:15:29.50 ID:Du4y4HqP0
千聖(心が満たされていくのを感じながら、そのまま頭を撫で続ける)
千聖(数秒か数分か、撫で続けた頃。何かに気付いたかのように、花音の表情が少し曇る)
千聖(……誰よりも優しいこの子のことだから、きっとまた何かを我慢しているのでしょうね)
千聖「何かまだ、したいことがあるのでしょう?」
9: ◆bncJ1ovdPY[sage saga]
2019/09/21(土) 23:15:56.02 ID:Du4y4HqP0
千聖「……もう、仕方のない子ね」
千聖「大丈夫。離れたりなんてしないわ。私と花音は、ずーっと一緒よ」
10: ◆bncJ1ovdPY[sage saga]
2019/09/21(土) 23:16:21.99 ID:Du4y4HqP0
花音「えへへ……♪」
千聖(私のその答えに安堵したのか、不安が消え去った彼女の顔はまるで満開の桜のよう)
千聖(季節外れでも美しく咲く夜桜を見ながら、自分の心臓の鼓動が早くなっているのを自覚する)
千聖(高揚、しているのかも。離れたくないと言われ、求められることに)
11: ◆bncJ1ovdPY[sage saga]
2019/09/21(土) 23:16:48.40 ID:Du4y4HqP0
千聖(離れないと誓ったはいいものの。このままずっとここに居るわけにもいかない)
千聖(このままずっと二人きりで居たいのは山々だけれど、お互い親が心配するだろうし。それとは関係なく、花音のようにか弱い女の子をこんな場所に居させては危険があるかもしれないわ)
千聖(数秒の思案の後。この状況にピッタリな言い訳を思い付く)
千聖(ーー道に迷ったことにしてしまおう、と)
12: ◆bncJ1ovdPY[sage saga]
2019/09/21(土) 23:17:14.73 ID:Du4y4HqP0
千聖(私は電車の乗り継ぎが苦手、花音は方向音痴で迷いがち。普段なら悩みの種となるそれが、今に限っては味方となる)
千聖(花音のせいにするのは嫌だから、電車を乗り間違えたことにしてしまえばいい。私が電車を乗り間違えるのはよくあることだから、きっと誰も疑わない)
千聖(我ながら悪いことを思い付くわね。でも、この笑顔を今だけは私だけのものにしたいから)
千聖「花音、ちょっとスマホ借りるわね」
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