吉田春「便器の子?」水谷雫「ハル……あんたどんな耳をしてるの」
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9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/01(日) 22:35:22.22 ID:zHu/paS2O
「ふぅ……間に合ってよかった」
「雫のおかげだな」
「私が今日ここに居るのはハルのおかげ」

なんとかギリギリ間に合い、席に戻ってお互いに感謝の意を示すと、館内の照明が消えて暗くなり、上映開始のブザーの音が鳴り響いた。

映画が始まる。

(そこそこ……面白いのかしら)

じっくりと1時間ほど観賞しても、雫はこの映画が面白いのかどうかの判断がつかずにいた。
よく言えば無難に物語は推移していき、そこに時折山場のようなものを感じ取ることは出来るが、あくまでも劇的を演出しているだけに思えて、やはり自分は冷めているのだと自覚した。
特筆すべき点を挙げるとするならば、同じ弟を持つ姉としてヒロインの弟の可愛さにぐっと来た程度だ。

(やっぱり私はドライアイスなんだ)

夏目さんとササヤンくんは楽しんでいる。
時に目を潤ませて、時に身を乗り出し、食い入るようにスクリーンに没頭しているようだ。
そんな彼らに比べて、雫が自らの感受性のなさに自己嫌悪していると、隣の席からなにやら。

「ぐぅ……ぐぅ……」

なんて怪物くんの可愛らしい寝息が聞こえて。

(つまらないのは、私だけじゃなかったんだ)

それを知ってほっと安堵した雫はすっかり寝てしまった吉田春の手を握って眠気を覚ました。

(せっかく奢って貰ったんだから全部観よう)

そこからの後半1時間は前半よりも遥かに楽しめた気がして、それは間違いなく隣の席でスヤスヤ眠る怪物くんのおかげであると雫は思った。


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