22: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:21:12.02 ID:rNK9Zl/t0
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三船さんが歌うLast Kissは無事CD収録を終え、発売を迎えた。
先延ばしにされた最後の仕事は、今日の発売記念の披露イベントということになっている。
ただ歌を世に出すだけでなく、一度くらいは人前で披露してほしい、という僕の要望によるものだ。
「いよいよ、ですね」
ドレスに似た衣装を身にまとった三船さんに声をかける。
その姿は、大人の女性としての彼女の魅力を存分に引き立てていた。
ライトを当てられているわけでもなく、控え室に佇むだけなのに輝いて見えるのは、僕のひいき目だろうか。
「ねえ、プロデューサーさん。私、前の仕事に勤めていた時も、私がアイドルなんて、って思っていた時も、あなたにキスをした時も」
彼女は立ち上がり、ゆっくりとこちらに近づく。
僕は軽い相槌とともに、話の続きを促す。
「これで最後だ、って思っていたことを、本当に最後にできたこと、ないんです。……ちゅ」
「っ!?」
無防備な僕に、彼女はキスをした。
予想していなかった出来事に、ほおを染める彼女をただ見つめることしかできない僕は、きっと間抜けなほど目を丸くしていることだろう。
「ほら、今も。……今日は正真正銘、最後のステージ。私が私だけの歌を歌うのも、最後です……ふふっ」
意味深な笑みとともに、呆けたままの僕を中心にしてステップをくるりと踏む。
「プロデューサーさん、私、変わってしまったんです。変えられて、しまったんです。あなたに、こんな風に」
いいな、と思う。
また新しく見えた彼女の魅力をどう表現させてあげれば輝くだろう。
そんなことばかり、考えてしまう。
「だから責任、最後まで、取ってくださいね」
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