84: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/07(月) 00:56:10.44 ID:a3VuJV360
「……そうですか」
「冷たいか?」
「いえ、そんな」
「気にするな。言われ慣れている。私に言わせれば、手当たり次第に抱え込む人間のほうが信用ならんよ。随分と後藤田の薫陶を受けてしまったようで、少々困りものだが」
「後藤田提督の?」
「ふふふっ。あぁ、いや、なに、すまん。忘れてくれ。なんとも恥ずかしいな」
「?」
グラーフはキャップの目庇を深く傾けて、目を隠す。頬が赤らんでいるように見えた。
ぱたん。本が彼女の手の中で閉じられる。
「ヒトに戻ることに不安が?」
「……」
それは恐らく間違いだった。私は私のことさえわからない前後不覚に陥っているけれど、それでも、胸中渦巻く黒い靄の源が、言ってしまえば単なる転職に起因するものとは到底思えなかったのだ。
楽に生きたいと、後藤田提督に言ったのは嘘ではない。ただ、こんなふうに、人生を終わりに向かわせるのもまた違う。
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