38: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/08/22(木) 00:18:22.22 ID:ihyj2nok0
彼らは、こうなることを知っていたに違いない。私が、という話ではない。要救助者を全員助けられないことのほうが圧倒的に多くて、眼を覚ました者はみな第一声に他者の安否を尋ね、そして……絶望する。
激痛に苛まれる体であってさえ、死よりは遥か遠くにある。それでも喜びの感情はない。かといって自分が誰かの代わりに死ねたらいいのにとも思えない。姉さまも、他のみんなも、嬉しくはないだろうから。
この世はとかく不幸に満ち満ちている。
姉さまは、いずれ慣れると言っていた。私はどうにも、それを信じられそうにない。
人間は慣れる生き物だ。苦しみにも、辛さにも、痛みにも。事実私は随分と体を動かすのも楽になった。だけれど、親しい人や愛する人が死ぬという不幸、それに揺れる心さえも麻痺してしまった生き物が、果たして人間と呼べるのだろうか。
こんな苦しみ、辛さ、痛みなど、もう二度と味わいたくはないというのに、鈍感になりたくもないという自己矛盾。
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