36: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/08/22(木) 00:17:27.17 ID:ihyj2nok0
この世は不幸に満ち満ちていて、姉さまはいつも力なく笑っていた。どんなに辛いことも苦しいことも、いずれ慣れる時が来る。受け流してしまえばどうにでもなる。それに、山城、あなたさえいれば。
不幸な私たちに与えられた唯一の幸運が、最愛の姉妹の存在なのか、あるいは、最愛の姉妹という幸運によって、これほどまでの不幸が与えられているのかは、一生わかることはないのだろう。
相も変わらずにこの世は――というより、私たちの人生は不幸に満ちていた。それでも徐々に、遅々としてではあるが、上向いてきてもいた。仲間ができたのだ。同じ鎮首府で、背中を預けられる大事な戦友。
満潮や時雨は小さいけれどしっかりもの。口数の少ない加賀も、自己主張が苦手なだけで、魅力的な人物だ。鈴谷の性格は私たちとはまったく違っていて、まともな化粧の仕方をそこで初めて教えてもらった。
たった二人だった私たちに、家族ができようとしていた。
だからなのだろう。
この世は不幸に満ちているから。
少しそのことを忘れてしまえば、すぐにほら見たことかと言われてしまう。
身分相応を知れと蔑まれてしまう。
多くを望んでしまったのが運の尽きだ。
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