32: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/08/22(木) 00:15:12.88 ID:ihyj2nok0
扶桑姉さまは、この世でたった一人の家族だった。
私たちは天涯孤独ではなかったけれど、単にひとつ屋根の下で暮らす存在が家族だとは思わない。戸籍謄本に乗っているだけの関係が家族だとは思わない。そういう意味では半分だけ孤独ではあったのかもしれない。
私には姉さまが、姉さまには私が、それぞれいればそれで十分だった。互いが互いの半身だった。
人という字はひととひとが支え合っている様を表すというのは、きっと間違いなのだろう。私と姉さまがふたりでひとつ。少なくとも、私たちにとっては。
山城。わたしたちは、ずっと一緒にいましょうね。わたしは絶対にあなたを裏切らないから、信じ抜くから、あなたもわたしを裏切らないでね。信じ抜いてね。
こんな不幸に満ちた世の中なんて、きっと一人では生きていられないわ。だけど大丈夫。わたしにはあなたがいるもの。あなたにはわたしがいるもの。
姉さまは口癖のように、夜毎の子守歌のように、隣でそう言っていた。
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