190: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/08(日) 11:02:55.17 ID:d80kTEDO0
じじ、じっ、じりっ、じりじじ、じじぃっ。
脳内で砂嵐が吹き荒れる。
考えるな。考えてはいけない。
怒りに呑まれてしまうから。
そんなだから、私たちは見捨てられたのだ。
「失敗」の烙印を恐れた奴らの手によって。
ぎゅっと握りしめた右手、その人差し指を掬うかのように、そっと柔らかい感触が添えられた。思わず愕然とした気さえして、振り向いた先には大鷹が儚く微笑んでいる。
大丈夫ですか? と、聞かれた気がした。
「大丈夫よ」
答えても、大鷹は小首をかしげるばかりだが、幸いなことに手は離さないでいてくれた。
三棟から少し離れて巨大なクレーンの突き出たドック、電子錠とパスコード認証によって固く閉ざされた研究所、運動用のトラックなど至れり尽くせりだ。海へと視線を回せば演習のためのブイがそこかしこ。
私たち来客が寝泊まりする別棟も近くにあり、花壇の草花がつつましやかに、けれど確かな手入れをもって出迎えてくれている。
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