144: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/23(水) 02:20:51.13 ID:0ARiWsal0
視線が吸い寄せられる。手が止まる――止まってしまう。まずい。大淀とグラーフがこちらを見る。ばれた。發が手元に二枚あること、そして何より、僅かな逡巡を。
発声を迷ったということは、まだ聴牌してないということである。役満の気配はそれだけで他家の動きを止める。が、それはこちらが聴牌している「かもしれない」からこそ作用する。
なんてことだ。自分で自分に怒りが向いた。この卓における私の脅威は消滅した!
ここぞとばかりに大淀が白、そしてグラーフも合わせての白。ドラ表示牌が白なので、あと一枚。
私のツモ――發。發! どうする? どうする!?
發ドラ3だと満貫止まり。混一、あるいは対々をまぜて跳満。だめだ、足りない。ツモってもグラーフは捲れない。二着で満足するか? できるのか?
指先が汗で滑る。
「私は負けない」
ツモ切り。あくまでゴールは決まっている。
勝ち負けとは結果だけで論ずることのできることではない。たとえ今負けていても、不幸の最中であったとしても、勝利を、幸福を希求しもがくこと、その姿勢、それこそがこの山城という女の道程に他ならない。
血を吐きながら、這いつくばって、無様に、みっともなく。
私は幸せを目指す。怒りに身を焼きながら前へと進んでやる。
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