138: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/10/23(水) 02:11:40.30 ID:0ARiWsal0
「仕事がなくていいものなのかな、と思ったの。こんな」
対子の北を切る。声はあがらない。セーフ。
「船の中で麻雀なんかやって」
グラーフがツモり、手牌を倒す。タンヤオ、ドラ1。500・1000。
親っかぶりだ。連荘の目はなかったとはいえ、こうやってこつこつと削られるのが一番きつい。点数は17800でラス、トップは33500のグラーフ。満貫直撃で逆転圏内ではあるが。
「だけど、大淀の言うとおりなんだわ。『便りがないのがよい便り』というか……暇ということは、平和ということなのよね」
こんな、暇を持て余して麻雀に興じることができるくらいには、いまの私たちには余裕があった。自由もまたあった。
北海道を出立して幾日か経ったけれど、緊急の要請がかかることは一向になく、台風の接近による天候の不順も相まって、岩手のあたりで停泊を余儀なくされている。外に出たところで寂れた港があるばかり。必然的に引きこもらざるを得ない。
こうやってのんびりとしていられるのは仮初の平和に過ぎないのだろう。こうしている間にも、きっと、世界のどこかで誰かが苦しんでいる。泣いている。不幸な目に遭っている。この安寧は単なる無知に他ならないのだ。
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