双葉杏「透明のプリズム」
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50: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:35:46.99 ID:OJA0wgUK0











私はよくプロデューサーに会いに行くようになった。

わざわざ階を下りて、昼休みの時間にご飯を一緒に食べたりした。
休日に出掛けて会いに行ったりもした。
貴重な休日を潰すことに抵抗がないわけではなかったけれど、太陽が昇って沈むのを部屋で眺めることに一日を使うよりは確実に有意義な休日の使い方だったし、彼も吝かではなさそうだった。

とはいえ私も彼もとりたてて行きたい場所があったわけではなかったので、出掛けるときはその日の気分で目的地を決めた。
特に観に行きたかったわけではないけれど何となく興味を引かれた映画を観たり、ゲームセンターに必要以上に長居したりした。水族館に行ったこともあった。
 


「あいつとはどう?」


私は窓の外を眺めていた。
平日の夕方だったけれど、プロデューサーは会社を休んでいた。
休んでいたというのは有休を消化していたとかそういうことではなく、彼にとって会社が休みの日だった、ということだ。
――プロデュース業というものは学生が丸一日を使える土日に仕事が入ることが多く、その代わりに平日に休日が割り当てられる制度らしかった。

せっかくの休日だというので、私は彼と会う約束をしていた。
小雨が降り始めたのは、駅で落ち合って大通りへと出た矢先のことだった。
特に行く宛ての無かった私たちは、ちょうどそのとき目の前にあったカフェに入店したのだった。


「あいつ?」

「ああ、お前の今のプロデューサーだよ」

「ああ、あの人ね」


新しいプロデューサー。担当が変わってから随分経ったんだし、新しいという枕詞をつけるのもおかしい気もするけど、彼とはそこそこ上手くやっていけていた。
今のプロデューサーは元プロデューサー以上に歳が近いから話が繋がりやすいし、価値観も似通っている節があった。


「そうだなぁ……あんまり前と変わらないかな」


前、というのは担当プロデューサーが変わる前のことだ。仕事の量も質もそんなに変化していないし、変わったことといえば、むしろ元プロデューサー――すなわち私の目の前にいる彼だ――との関係の方だった。





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