29: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2019/08/10(土) 00:48:59.01 ID:k2me14jR0
「まぁ、わかんないならいいんだけど……じゃあもう一つだけ、聞いてもいいかな」
「どうぞ、なんなりと。もう信用がないかもしれないけど……」
「そこはもう、信じるよ。これで裏切ったら次は知らない。……で、質問なんだけどさ。前に私が奥さんってどんな人って聞いたでしょ? それで咄嗟に答えられたのはなんで?」
「あー、あれかぁ。…………えーっと、それは秘密でもいいですか」
「だめ。秘密にしたらもう絶交だから」
「絶交はちょっと嫌……どころかめちゃくちゃ嫌だなぁ……」
「じゃあ答えて」
「……はぁ。えっと、あれさ、凛のことなんだよ。笑顔がかわいくて、気が利いて、優しくて、でもちょっと不器用で……素敵な人、って」
少年のように耳まで真っ赤に染めて、プロデューサーが言う。
「あー…………」
私も返答に困り、顔の方に血がのぼっていくのが自分でわかってしまう。
しまいにはお互い真っ赤になって、車内は再び沈黙に包まれた。
静けさに耐え切れなくなって、カーオーディオを操作しようとしたプロデューサーを制止するように、私が口を開く。
「……ねぇ、それって、そういうこと?」
「えー。あの話をしたあとでそれ聞く……?」
「いや、だって。……気になるでしょ?」
「………………んんん……そう、だなぁ。いや、でもここはノーと言わせて欲しい。いいですか。ノー。ノーです」
「……まぁ、そう言うしかないよね」
「……」
「……。ふぅ、じゃあ、さ。この十分間くらいにあったことはお互い、なかったことにしよっか。そうしたらこれからも支障ないと思うし」
「……うん。ありがとう。そうしてくれると助かる」
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