263:名無しNIPPER[sage]
2019/08/26(月) 02:09:39.23 ID:SSNuJUz+0
俺はもっとよく見る為に右目の視力を強化する。メリルの軍隊の前に西洋風な鎧に身を包んだ金髪の青年、俺は直感でそれがアレスだと分かった。
大剣を地に刺し、ノース帝国の軍勢を涼しき顔で眺めている。随分と余裕そうだな、自信があるのか。
次にノース帝国を見やるとわらわらと居る冒険者の前に居た人物に俺は目を丸くする。
「あの時の奴だ……」
忘れもしない、ノース帝国の街角でぶつかった奴だ。相変わらず黒装束に白い仮面を着けていて、あの時とは違い腰に差している得物は長剣のようだ。
まさかあいつが二等級ヴァーダだったとはな。ヴァーダは規格外の強さみたいだし、俺が跳ね返されたのも多少は頷ける、多少な。
俺は何度か2人を交互に見た後、アレスの隣に見知った女が出てきた……あれは間違いなくクレアだ。
今にも始まりそうな雰囲気の中、俺は森からメリル側へと移動する。
定石だけど、恐らく要人は後方待機だからな。俺は軍勢の中に引っ込むクレアを見ながら軍隊の最後尾を目指す。
「皆の者!!」
これは…恐らくアレスの声だろう。
「メリル王ガイウスに仕えるヴァーダ!アレス・ニル・ラスティアの名にかけて誓う!我が軍に勝利を齎すと!!」
俺は今の言葉に引っかかったが、何に引っかかったかが分からない。今は後にしよう、とりあえずはクレアの元に急ぐんだ。
「己が誇りに誓え!我らは勝つ!その武を持って……敵を殲滅せよ!!」
「全軍!進軍開始!!」
アレスの鼓舞に兵士達は大声で応える。兵士達は一斉に走り出すと、ノース帝国側の冒険者達も両面に展開を開始していた。
ついに始まってしまった、戦争が。
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