34: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/15(木) 16:28:14.98 ID:p4U+w2zG0
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……俺は雑踏の中、ベンチに座って空を眺めていた。徐々に傾いていく太陽の光を浴びながら、しかしそれを眩しいと思えないほどには情動が失われていた。何か、心の中の大きなものを持って行かれたような、そんな気がするくらいに。
あの中年の男性――プロダクションを立ち上げ予定の社長はほんと、大した度量の人だ。そうでなければ篤志家か、あるいはギャンブラーだろう。
社長と俺は話した。“アイドル”という世界について。その中の半分くらいは、かつてあの場所に存在したインディーズレーベルの人たちから聞いた受け売りだったけれど、それでもすらすらと説明することができた。
講義料を払っただけあって、彼らから聞いたことに説得力はあったのだろう。社長はしきりに頷き、なるほどと言っていた。
実際に俺も共感する部分が多かったから気持ちはとてもわかる。いつか役に立つものだ、と思っていたのがこんな形で役に立つとは思わなかったが。
そしてもう半分は……俺の夢の話だった。
プロデューサーになりたい。そんな下らない話だった。どうしてなりたいのか、そう思った理由は何か。それをたどたどしく話した。
そして彼は言った。
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