31: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/08(木) 19:06:20.85 ID:caute9RW0
『……もしかすると、意味があるかもしれないじゃないですか』
言ってから意味などないと思った。こんな子供の駄々でしかない言葉を取りあう人なんているはずがない。
「そうか、では話してみようか」
――そんな俺の予想は外れた。唖然としている俺をよそに、彼は話し始める。
「実は私の経営学の師匠が昔、芸能プロダクションを経営していてね」
芸能プロダクションの経営者が師匠だと、目の前の男性は言った。その瞬間、俺の中で何かがどくん、と跳ねた。
「かねてより私も興味があって、どのような方向性が良いか……という参考にいろんなインディーズレーベルを巡っていたのだ」
軽く笑みを浮かべ、目の前の男性は俺の目をもう一度見た。ひどく鋭い眼光だったが、不思議とさっきほどには恐れることはなかった。
「個人的には師匠と同じ、アイドル系のプロダクションを経営出来たらと思っていた。だが最後にとアイドル系のここに来たところ、潰れていて途方に暮れているというわけだ。……さて、これが私の用件だが。意味はあったかな、君?」
『……ええ、きっと』
俺は不敵に笑った。笑ってしまった。折れかかっていた心は、なぜかすっかり直っている。
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