2: ◆jPpg5.obl6[saga]
2019/07/20(土) 19:55:29.02 ID:uMGHN9V30
男「ああ、クソ」
這う這うの体で逃げ込んだ、元は酒場だった廃屋の朽ちたカウンターの陰に座り込み、俺は荒い呼吸を整えた。
手持ちの拳銃の弾はマガジンの中に10発。13発入りの予備の弾倉がポーチの中に5個。
あの数の盗賊を相手にするには弾数が少ない。
背中に背負った狙撃用のライフルのほうはたっぷり弾が残っているが、そいつはボルトアクションと呼ばれる作動方式の銃だ。
つまり一発撃つたびにボルトを操作する必要があるから、盗賊どもに見つかって肉薄された今は無用の長物と考えていいだろう。
深呼吸。鼻から息を吸い、肺の中で少し止めてゆっくりと口から吐く。
何度か繰り返すと少しだけ気分が落ち着き、思考を巡らせる余裕ができた。
もうすぐで日の入りだ。そこからさらに待てば夜になるから、こちらは暗がりに紛れて盗賊連中の縄張りから脱出しやすくなる。縄張りの外には「怪物」どもがいるだろうが、奴らはのろまだし、頭が悪いから盗賊に比べればまだマシだ。
散り散りに逃げた仲間たちはどうなったんだろう?何人かはまだ生きているかもしれない。だが今から合流するのはリスクが高すぎる。彼らには申し訳ないが、まずは俺自身の身の安全を考えるべきだ。
まあいい。とにかく夜まで隠れ続けて逃げるチャンスをうかがえ!
建物の外から何人かの足音と話し声が聞こえた。
「俺とワシーリイはこっちを探す。お前たちは向こうを探せ。お互いから離れるなよ」
「わかった」
盗賊の何人かは通りの向こう側に消え、二人分の足音がこっちに向かってきた。
奴らが来る。俺は拳銃を握り直して、最善の行動は何か考える。
死ぬ覚悟はできていない。だが殺す覚悟はできた。
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